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不可聴音域の不思議 [音楽理論]

皆様、お待たせいたしました。 更新しようとすると、電話が鳴ったり、さあやろうと思うと、サイトが重くて自分のブログに入れなかったり、でした。

 あ、そうそう、前回の「バラード」について、わざわざメールをくださって「いいですね~なんで、もっと早く教えてくれなかったの」という、うれしいお叱りまでちょうだいしました。

AKIさん、これからもごひいきに。あ、皆様も、です。

さ~、今日もがんばるぞ!ってもう、真夜中ですが・・・

え~、今日は不可聴音域について、お話したいと思います。(って、勝手に私が決めただけですが、ハイ)

不可聴音域とは、人間の耳には聞こえない音域のことをいいます。

人間の耳が聞き取れる音は、周波数で言うと16~18000Hzの範囲とされ、それ以下、(低周波)それ以上(高周波)は鳴っていても、聞き取れないとされています。

しかも、可聴範囲の16~18000Hzも、だいたい24歳くらいまでがピークで、後は衰える一方だそうです。 (とっくに越えてるわ。悲し~)  

しかし、犬は20000Hzくらいまでの音を聴くことができ、人は犬笛が鳴っていても聞こえませんが、わんちゃん達にはしっかり聞こえているのだそうです。 犬笛は犬が聞き取れる高周波を出すように、作られているのですね。

レコード(LP等)の時代が終わり、CDが登場した時、聞こえないなら、いらないじゃないかということで、不可聴音域はカットされて録音されるようになりました。というわけで、普通のCDでは、50Hz以下と、20000Hz以上がカットされています。

しかし、なぜか耳の肥えたオーディオファンの皆様からは、「CDは音がうすっぺらい。」とか、「音がとげとげしている。」などの苦情が寄せられたのです。 手入れが大変なレコードに比べ、保存もきくし、手入れもほとんどいらないCD,コンパクトで場所も取らないし、いいことずくめ、と思われたのに。

ところが最近、音に関する研究が進むにつれ、そのオーディオファンの皆様の耳が、いや、人間の耳がいかに素晴らしいものであったかが、正確なものであったかが、除々にわかってきたのです。

 なんと邪魔者扱いされてきた2万Hz以上の音を聞くと、人間の脳からアルファ波がじゅ~っと出て、気持ち良くなるのだそうです。(たぶん、じゅ~と音はしない・・)

アナログのレコードやカセットテープには、そういった不可聴音域の音までもが録音されているため、聞いた時の満足感が違うようなのです。

2万Hz以上の音がよく出ている音楽として、ガムラン(インドネシアはバリ島の民族音楽)がありますが、このガムランを被験者に聞かせ、脳からアルファ波が出ているのを確認した後、今度は2万Hz以上の音域をカットしたガムランを聞かせると、全くアルファ波が出なかった、という実験のVTRを見たことがあります。

ガムランと同じく、不可聴音域の音をたくさん出している音楽に、わが国の謡曲、つまり能楽の音楽があります。

あの、鼓とか、おおかわとか能管などが使われている、よ~おっ、ポン!というあれですね。

これがなんと、100kHzもの音が出ていることがわかったのです! (実際は聞こえませんが・・・)

つまり、2万Hzの5倍ですね。 

そうすると、これは聞こえていない音域の方がむしろ主力であるという点で、とても神秘的な音楽であるといえるでしょう。

実際に能楽堂へ行って、能を見ていると、何ともいえないリラックス感があり、自分の感受性が鋭くなっていくような気がします。(管理人は「O槻能楽堂友の会」の会員。 最近行けてないので、行きたいよ~

能楽の「幽玄の世界」は、この不思議な音楽によって醸し出されているのかもしれません。

特に、能に使われる「能管」という横笛ですが、この能管が出す「ひしぎ」と呼ばれる音、これも2万Hz以上の音が確認されており、不思議なことに、「ひしぎ」が使われるのは、幽霊や、神といったこの世ならざるものが登場する場面なのです。

観客はこの「ひしぎ」を聞いて、知らず知らずのうちに脳からアルファ波を出し、(というか、出さされ)気持ち良くなったり、神秘感にうたれたりしている訳ですね。

実は「ひしぎ」は石笛(いわぶえ)という、出雲地方の神社などで儀式に使われる楽器の音をまねた音なのだそうです。

石笛は石に穴を一つ開けただけの簡単な構造ですが、6万Hzの音が確認されています。 そして、神おろしの儀式のときに、神主さんによって吹かれるのですが、お参りしている人々はなんともいえない陶然とした気分になるそうです。

ガムランも石笛も、能管も、そういった意味では、宗教的なもの、神秘的な神の世界を感じさせる力を持っており、昔の人が不可聴音域などという言葉など知らなかったにもかかわらず、その事実を察知していた、ということは、驚嘆に値します。(゜o゜)

人間の感性って、凄い!

ある音を聞くと、神を感じたり、神秘的な気分になったりすることを、ちゃんと知っているんですね。 これはもう、本能といってもいいのかも・・・・

それで最近では、SACDなどといって、不可聴音域まで入っているCDや、それを聞くためのオーディオが発売されていますが、まだまだ、お高い・・・。

そこで見直されてるのが、昔懐かしいLPとレコードプレイヤーです。

大手レコード会社の中には、絶版になってCDにもなっていないレコードを、復刻させるところも出てきました。

LPの盤面に指を触れないように気を使い、静電気よけのスプレーをかけ、そーっと表面のゴミやほこりを拭い、ターンテーブルにのせる。

そして、針を飛ばさないように、これまたそーっと落として、忍び足でその場を離れ、正座して静かに耳をかたむける。(動くと針が飛ぶから

やがて、ぷちぷちというスクラッチノイズがおさまり、大好きな曲が始まる・・・

これって、まるで宗教的儀式じゃありません?

でも、音楽を聴くのに、これくらいの労力を使ってもいいんじゃないでしょうか?

それくらいの「ありがたみ」があってはじめて、日常のなかの非日常が味わえるのではないでしょうか?

てなことを、三日もかかって書きました。(わはは、やっと更新できた

 

で、興味のあるかたは、↓で「ひしぎ」を聴いて、不思議な気分になってね。

「横笛研究会」           能管の「ひしぎ」が聞けます。(ただし2秒)

(お手数ですが、検索をお願いします。「能管」の最後の部分にひしぎの音が入っています。)


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Lisa

はじめまして。素晴らしいお話ですね。とても興味深く読ませていただきました。確かにまたレコードプレーヤーが復活してますね。働いてるCD屋にはあまりないですが、LP盤も出してるアーティストもいますし。
ところで私Jazz好きなのですが、気がつけば日本人の演奏ばかりしか聴いてないのです。『バラード』この記事を見て、売れる理由がわかったように思います。洋楽Jazzには疎いので、他にもオススメあれば是非教えて下さい。お願いします。ちなみにUAの新譜はオススメです。収録曲『チュニジアの夜』はJazz通にも納得の内容だと思います。
by Lisa (2006-08-27 00:15) 

Kiichi

今回の話は、15歳にはレコード屋さんに
CDが置いてあった世代からしたら
かなり、耳の痛いというか、身につまされる
お話ですね。

以前、楽器屋さんの店長さんから
同じ様なお話を伺った事があり、
「君たちの世代は、強制的に
CDを聴く事が当たり前になったから、
ある意味、難聴なんだよ。」と言われた事
があります。

只、ラッキーだったのは書かれている様に
レコードをかける際の儀式を幼い頃から
経験していた事、つまりレコードの
快感を知ってる事です。
(匂いとか…ね。)

僕の家には子供の頃から、親の趣味で
「グレンミラー・ベスト集」とか、
「キャノンボール・アダレイ」とかの
LPがあり、その音楽を聴く方が
生理的に気持ち良かった。
(歌謡曲の番組も観てましたが…)
後、60~70年代の映画音楽…
エルビスから、「太陽がいっぱい。」とか。

後、CDを買うよりも中古レコード屋さんに
行って、目当てのLPを買った方が安かった…
という事情もあるのですが、あのレコードを
かける儀式を踏まえると、「さあ、今から音楽
聴くぞ!一音たりとも逃すものか!」という
意識になってました。
(でも、よく指摘されるんですよね?
自分の音を弾きながら、ちゃんと聴きなさい。ってね。)

音楽の最初の師匠である
シルヴァン・ギニヤール先生も
http://www.geocities.jp/silbiwa/main.htm
(この人、クラシックと民族音楽しか
興味を示さない人ですが…、
僕は恥かしながらこの人から、
お琴の曲とか、邦楽、能、歌舞伎、浄瑠璃
を教えてもらいました。そうそう、
先生の名前で検索してくれたら、どんな論文を
書いてるか?どんな活動をされているか?
解ると思うんで、あいつは一体最初どんな奴
から音楽を教わったんだ?と思ってくれたら
検索していただけると嬉しいです。
又余談ですが、彼の祖母はクララ・シューマン
の最後のお弟子さんです。)

「アジアでは、主に音楽を演奏する事は
儀式であったはずだ。僕はガムランが演奏される際
演奏を始める前に、後のゴングにお供えをして、
音楽の神様に、祈って、それから演奏する。
というスピリッツには、非常に共感する。」
と話してました。

音楽は元々儀式に入るた為の心の準備だったり
シャーマンがトランスして、お告げをする
という様な、儀式自体がトランスする為に
利用されていたかもしれませんね。

昔の人は、周波数は解らずとも
生理的に知りつつ、改良し、
改正していったのかもしれない。

さらに余談ですが嬉しいです。
先生がブログにPOPな感じで、
この様に音楽について
書いてくださる事が。

だって、音楽については「考えすぎ。」とか
「もっと気楽に…」って言われるんで…
by Kiichi (2006-08-27 08:15) 

hirosonya

管理人で~す。(^^♪
Lisaさま、いらしゃいませ、UAですか。
以前から、とても興味があったんですが、菊池成孔さんとのコラボと知って、ますます聞いてみたくなりました。
なんか、昔、チャカ・カーンが「ビ・バップを歌う女」で「ジャイアント・ステップ」を歌っていたことを、思い出してしまいました。
そのうち、私的「おすすめジャズ」みたいなのを書かせていただきますので、よろしく!(*^_^*)
by hirosonya (2006-08-27 23:27) 

hirosonya

kiichiさん、今晩は。
ギニヤール先生のご紹介、ありがとうございました。
さっき、HPへ行ってみたのですが、なぜか入り口がわからなくて(^_^;) 帰ってきました。(笑)
素晴らしい方を教えてくださって、ありがたいです。
これからも、いろいろ教えてくださいね。
by hirosonya (2006-08-27 23:35) 

サンサンてるよ

ご報告が遅くなりましたが、早速、ワタクシの不老具(ブログ)にて、このお話を紹介させていただきました。「ねえねえ知ってた?」の9月1日付けで・・またいろんな「目からウロコ」情報を教えてくださいませ。能の鑑賞の際には、お誘いいただけたら嬉しいです。
by サンサンてるよ (2006-09-05 13:55) 

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